新田内科医院 広島市東区牛田早稲田,広島駅 内科,呼吸器科,消化器科,循環器科

高血圧とは

血圧は通常上腕(右または左,あるいは両方)に駆血帯を巻いて測ります.血圧計の駆血帯の幅や長さも規定があります.本来は医師が血管音を聞いて音の開始 点と消失点の水銀圧を読んで血圧値としますが,最近では血管音ではなく脈派を感知して血圧値を算出する電子血圧計が多く使われています.
これは誰でも測れる(ような気がする)ので便利がよいのですが,たいへんな落とし穴があります.それはあとで説明することにして血圧値の分類を示しておきます.家庭血圧は普通これより収縮期, 拡張期とも5mmHg基準を低くします. (2013年高血圧治療ガイドライン 日本高血圧学会)

成人における血圧値の分類

至適血圧  <120 かつ <80
正常血圧  <130 かつ <85
正常高値血圧 130~139 または85~89
軽症高血圧 140~159 または90~99
中等症高血圧 160~179 または100~109
重症高血圧 ≧180または≧110
収縮期高血圧 ≧140かつ <90

血圧測定に使用する駆血帯(空気を入れて膨らせるゴムの袋)は体格にもよりますが,通常幅13cm(上腕周囲の40%),長さ22~24cm(上腕周囲の80%)とされています.(上記ガイドライン)

普通成人日本人の腋窩(腋の下)から肘関節まではせいぜい17~20cmです.この間に13cmの幅の駆血帯を巻くと残りは4~7cmしかありません.つまり駆血帯を巻いた残りの腕の長さはせいぜい5~7cm(駆血帯の幅の半分)がいっぱいというところです. 右の写真(03.2.25 中国新聞)を見てください.

これは高血圧学会の有名な偉い先生が血圧を測定しているところです.着衣のたくし上げもかなりきつく,無理をしていますし,また駆血帯の幅と,その上方のたくし上げた衣服の幅がほぼ同じです.

駆血帯の幅を13cmとすると,駆血帯の下縁が脇から26cm下となるので,(上腕の長さを20cmとして)肘より最低6cm(駆血帯の幅の半分)ほど下 方にずれているということです.つまり駆血帯の中央部が肘の関節あたりに来ることになります.これでは正確な血圧は計れません.

 

次に左(04.2.29 朝日新聞)を見てください.これはイラストですがやはりたくし上げた衣服の幅よりも駆血帯の幅が小さく描かれています. これは幅が6~7cm程度の幼児用の駆血帯を使用しているか,あるいは駆血帯の幅を13cmとするとこの人物も上腕の長さが26cmを優に超える異常長腕の持ち主ということになります.

いづれにせよ普通の人の血圧測定の参考にはなりません.絵を描いたのは医学の素人でしょうが,間違いに気づかない専門家が見ていることで,知ったかぶりして書く新聞屋さんを責める気にもなりません.

 

次に右の写真(05.12.28 中国新聞)を見てください.これも高血圧学会の偉い先生の勧める血圧測定の写真です.

衣服はたくし上げていませんが衣服の上から駆血帯を巻いています.この先生に言わせると 薄いメリヤスシャツ一枚程度なら着けていてもよいそうですが,患 者の着ている衣服自体が一年中常に薄いとは限りませんし,また外の衣服を取って確認しないとその下に何が何枚あるかもわかりません.特に冬場にはほとんど の人が(特に中,高年者は)厚い長袖衣服の下にさらに厚い長袖の下着を何枚も着込んでいます.患者が長袖の衣服の下になにも着けていないと思うのは医師の 勝手な幻想であって,現実ではありません.これで正しい血圧値を求めても無理でしょう.

私が言いたいのは血圧を測定するには,原則 肩から下を衣服からフリーにして駆血帯は必ず肘ではなく上腕に巻くとです.

家庭血圧ではとくに測定時の誤差をできるだけ少なくする努力が必要です.袖口のきつくて厚い衣服をたくし上げたり,肩の下を大きなだんごにしたり,あるいは衣服の上から測定するなどはもってのほかです.

診察室で厚い衣服を沢山着込んだまま血圧を測定する(右下の図)ような手抜き診察では身体の変化もわかりませんし,基本的に内科医のすることではありません.

ただしこのような野暮なことを頑固に主張,実行しているのはたぶん日本で私一人でしょうか.同じ考えの人があれば心強いのですが. 内科医を名乗る人もそうでない人も,血圧の治療をしている(つもりの)医師は多いと思いますが,医学的に不合理なことでも 偉い人がすることは全て正しい こととして何も批判せず,横着法に追従していれば,医師は無風地帯に安住できると思っているのでしょうか.  家庭血圧が測れるようになって便利になったといいますが,肩から下の衣服をフリーにするという絶対条件を守るよう医師が強く指導しなければ(もちろん医 師自身が日ごろそれを実行していなければなりません),ルーズな方法で得られた家庭血圧と称する数値も信用できませんし,信頼性のないデータを沢山集めて 来て,こねたり丸めたりして書いた沢山の学術論文も大規模臨床試験も,現在信用できるものはほとんどありません.これでエビデンスが得られたからそれに 従って診療しろといわれても現場は混乱するばかりです.

前記 高血圧ガイドラインにはよいことも沢山書いてありますが,家庭血圧の重要性を指摘しながら、家庭血圧の測定時の、駆血帯の巻き方と衣服との関係につ いてはなぜか全く触れていません.これは学会の偉い先生方に血圧測定の基礎知識がないためで,ガイドラインとしては致命的な欠陥でしょう.

ガイドライン作成に携わる先生方には,実際に臨床の場でまじめに血圧を測定された経験のある人がいないと思うしかありません.

蛇足ながらむしろ血圧計のメーカーの方が,着衣の上からの測定がよくないことを知っているので,服を脱がないでよい手首の血圧計を売っています.しかしこ れは理論的にも少々無理があり,現時点ではガイドラインでも推奨していませんので,家庭血圧測定用には使用しない方がよいと思います.(掲示した写真はい ずれも記載した新聞の切抜きです)